第108章 競り値

二人が一歩も引かずに競り合うたび、出品物の値はみるみる跳ね上がっていく。もはや、その翡翠のバングルが本来持つ価値など、とっくに置き去りだった。

佐伯薫は張り詰めた対峙の空気を眺めながら、胸の内でますますほくそ笑む。有川紘樹の腕にしがみつく指先に力を込め、何としてでも落としてほしいと、しきりに目で訴えた。

彼女にとって、有川紘樹が退かずに高値を積み上げること自体が証明だった。自分は彼にとって、それだけ重い存在なのだと。少なくとも、かつての水野佑奈よりはるかに心を砕かれているのだと。

やがて場内のあちこちから、ひそひそと囁きが漏れ始める。

この品が最後に誰の手へ渡るのか。誰もが固唾をのん...

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